“目詰まり”の正体──備蓄米はなぜ市場に出なかった?!
米価格が高騰し、国民生活にも影響が出る中、農林水産省は2024年末から相次いで備蓄米を市場に放出した。表向きの説明は「物価の安定」であり、まっとうに聞こえる。しかし、事態は思ったほど改善されなかった。なぜか。
今回の備蓄米放出では、上限を設定しない高値落札方式が採用された。値下げの期待に応えるなら予定価格方式にすべきではなかったのか?
しかも入札に参加できる業者は「備蓄米を再納品できる体制がある者」に限られた。結果、落札の95%をJA全農が占めた。 そして、そのうちわずか7%しか市場に流通していなかったことが明らかになった。
米高騰・品薄に対する農水省の当初の説明は「流通の目詰まりが起きた」だった。しかし、その目詰まりを起こしていた主犯が全農自身だった可能性を考えると、話は見過ごせない。
そもそも、落札後に即座に市場に流す義務があったのかも不明瞭だ。仮に「迅速な販売」を求める契約であっても、自ら抱える在庫と組み合わせて売り控えを行えば、価格は維持できる。全農は国内最大級のコメ流通業者であり、流通量と価格の双方を事実上コントロールできる立場にある。
さらに言えば、入札条件の段階で再納品可能な業者に絞った時点で、参加者は事実上限られていた。これは出来レースだったのではないか?との疑念も生まれる。仮にそうでなかったとして、全農が供給の鍵を握っていることを知りながら、備蓄米の大半をそこに委ねた判断は「愚作」と言わざるを得ない。
農水省が公的資源を市場に投入するにあたり、入札制度や参加条件が特定企業の利益に資するような設計になっていれば、それは市場操作に極めて近い。行政としての説明責任と設計責任が今こそ問われるべきではないか。
しかし、私は農水省とJA全農ばかりを悪者に仕立てるつもりは無い。(記事は、次回へ続く)