高市氏の虚言ブースト癖に物申す

    近年、日本の政治家の言動には、「右傾リップサービス」が目立つようになってきた。支持層向けに強い言葉を投げかけることで拍手喝采を得る手法だが、それが国内世論だけでなく、外交関係に深刻な影響を与え始めている。特に問題なのは、その場の反応に合わせて発言がエスカレートしていく「虚言ブースト癖」とでも呼ぶべき現象だ。その典型が、現在の首相の座にある高市早苗氏だ。
    高市の「虚言ブースト癖」は、最初は軽いリップサービスとして始まる。だが受け手が興奮すればするほど、発言者はさらに刺激的な言葉を重ねていく。例えば、「外国人による鹿への暴行をSNSで見かけた」程度の話であっても、世論が強く反応すれば、「自分の目の前で暴行されていたのを止めた」と英雄的エピソードに膨らんでいく。
    同じ構造で、サイバー攻撃の一般的脅威の説明が「大陸からの攻撃だ」と位置特定にまで拡大し、ついには外交上のメッセージとして扱われてしまう。
    大臣を辞めるか問われた際の啖呵切りも象徴的で、一度強い言葉を放つと引っ込みがつかず、自ら退路を塞いでしまうわけだ。
    今回の「台湾有事の際の存立危機事態」に関する発言も、この延長線にある。
    本来、総理や閣僚が使う言葉は慎重であるべきだ。とりわけ国際情勢が緊張している時期には、言葉そのものが外交メッセージとなり、相手国を動かす力を持つ。
    だが、国内向けの右傾リップサービスとして強気の姿勢を誇示し続けた結果、発言が引っ込みのつかない領域へと進んでしまった。撤回すれば支持者が離れる。強気を維持すれば外交が悪化する。まさに自分で自分を追い込む形だ。
    台湾有事が日本にとって重大な脅威になる可能性は、外交・安全保障上の重要な論点だ。しかし、その懸念を安易に、しかも国内政治の支持集めのために公然と発言すれば、相手国は黙っているはずがない。実際、中国は尖閣周辺でのパトロール強化という形で即座に反応し、台湾近海の緊張どころか、日本領海内での緊張に波及する事態を引き起こしている。この上一つ対応を間違えれれば、それこそ存立危機事態となりかねない。
    これは、単なる国内向けポピュリズムが、国際関係を直接揺さぶっている証拠だ。
    ここで振り返るべきは、過去の例だ。安倍元首相は北朝鮮ミサイル問題を国内政治で利用したとされるが、実害の発生可能性が比較的低い相手を選んでいた。一方で、本当に日本が衝突すべきではないロシアとは、あくまで融和的なポーズを崩さなかった。その是非はさておき、外交的な線引きの巧拙をわきまえていたことは確かだ。しかし今の状況は違う。国内政治の過熱が、よりにもよって最大の経済相手国であり、衝突すれば日本が最も深刻な損害を受ける中国相手に向かってしまっている。
    政治家が国内向けに強い言葉を使うこと自体は避けられない。しかし、国際情勢に関わる発言は、一度口にすれば相手国の行動を誘発し、自国の安全保障環境を悪化させる。これを理解せずに「盛り」を続ける虚言ブースト癖は、もはや政治家個人の失言ではなく、日本国家そのものの存立危機につながりかねない。
    今必要なのは、政治家の言葉の重さを再確認することだ。そしてメディアもまた、過熱するリップサービスに踊らされず、言葉が外交に与える影響を冷静に分析して伝える責任がある。喝采を求めてエスカレートする政治家の虚言ブースト癖をどこかで止めなければ、我が国が自ら作り出した言葉の波に飲み込まれ、さらなる危機を引き寄せる日は遠くないかもしれない。

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